【連載】「丁度いい暮らしと住まいのつくり方」3

連載『丁度いい暮らしと住まいのつくり方』
第3回「あいだの空間を大切にしています」

これから家づくりをする方や家づくりを考え始めようとしている方に向けて、ブログの中で不定期(月に1回程度)の連載をはじめました。
個別のテーマはその都度変わりますが、連載のタイトルは『丁度いい暮らしと住まいのつくり方』として、これまでの設計事例の中からテーマに合わせて新築、リノベーションに関わらず事例をご紹介しながら、「丁度いい」とはどのようなことなのかを探っていきたいと思います。丁度いい暮らしを生み出すための設計の工夫や考えたこと、建て主の要望にどのように応えてきたのか、その他、個人的な想いなども書いていきたいと思っています。是非お付き合いください。

今回は連載の第3回目です。3回目は「あいだの空間」をテーマにあいだの空間があることでどんな効果があるのかを探りたいと思います。

あいだの空間とは建築的には「中間領域」などと言いますが、内部と外部の中間的な場所がその代表的な例だと思います。ここではその中間的な場所、あいだの空間の範囲をしぼったり、ひろげたりしながら様々な事例を用いてご紹介していきたいと思います。内部と外部の中間的な場所とひと言で言っても性質によって幾つかの種類に分けることができます。「内部的な外、外部的な内、限りなく内部の外、限りなく外部の内、内部の延長としての外、外部の延長としての内」などが思い浮かびます。それぞれはその環境や設え方で印象が変わります。それでは具体的に見ていきましょう。

最初は戸建て住宅の事例です。

事例:小平の住宅


写真は1階の寝室から外にあるテラスを見ています。寝室に隣り合う形で設けた畳2.5帖ほどのテラスです。上部は屋根で覆われ、一部壁でも囲われています。比較的オープンではありますが屋根と壁に囲われていることで安心感があります。内部の延長としての外と言えます。この場所が生まれた経緯は、共働きのご夫婦から雨に濡れずに洗濯物を干しておけるスペースが欲しいという要望を受けたことから始まります。せっかくなので庭に植えた植栽をまじかに感じ、暖かな太陽の陽にあたりながらくつろぐことができる場にもなればと思い、この場所が生まれました。壁があるのは、上に載っている2階を支える構造の役割もありますが、この壁があることでの安心感と周囲から見られている感覚を減らすことを考えて設けています。

事例:練馬の改修住居


続いて内部的な外の事例です。2階にあるダイニングに連続するように設けたテラスです。

テラス全体を屋根が覆い、一部は壁で囲まれています。室内のように使うことを想定していますがあくまでも外です。この空間の良いところは、テラスに椅子を持ち出してゆったりとした時間を楽しんだり、本を読んだり、珈琲を飲んだり、外の空気や風に吹かれる時間がもてることだと思います。他には、テラスに隣接したダイニングの窓に雨が直接あたることはあまりないので、雨の日でも窓を開けておくことが出来るのも良い点です。そういう意味では内部の延長としての外と捉えることもできると思います。

事例:国分寺の小さな住居

1階にある玄関土間の写真です。旗竿敷地の所謂「竿」の部分にアプローチがあり、そのアプローチ(外部)の延長に玄関を設けています。外部の延長としての内または外部的な内の空間です。外部的と言っているのは床仕上げがモルタルの土間だからだけではありません。玄関の引戸を開けるとアプローチと一体になり、同じく引戸の勝手口を開けると外へと繋がっていく、アプローチという外の空間が家の中まで続いて、通り抜けていく感覚が外部的だと思います。また、外と内の床の高さの関係性も大切な要素です。この事例のアプローチと玄関土間はほとんど段差がないように見えます。実際には雨や水が玄関に入り込まないようにしなければいけないので段差を設けていますが、その段差がないように見せるというつくり方が大切だと思います。その空間に求められている要望や機能を満足させるために、どういう場所であるかを考え、どのような機能が必要であるかを考え、そのためにはどう見えるのが良いかを考え、全てが合理的にまとまるような方法を模索しながら設計を繰り返しています。

事例:練馬の改修住居

同じように外部の要素を内に引き込むことで内部と外部が繋がるという事例です。内と外はガラス窓で仕切られていますが視線が抜けることで繋がっているように感じられます。室内の床仕上げと外のテラスの仕上げを茶色の木とすることで(同じではないですが)似た雰囲気の場が繋がるようにしています。室内の上空は屋根まで吹抜けることで外のような開放的な場所になることを意図しました。

事例:ウチソトの間合


もうひとつ、外部を引込み外部の延長としての内のように設えたマンションリノベーションの事例をご紹介します。細長い玄関ホールが奥まで続いています。床には大谷石を敷き、外との段差はほとんどなく、土足で突き当りまで進んでいきます。ここでは石という素材を通して感じる感覚と土足で歩くという行為により、外部のような設えを実現しました。

事例:囲みの層

同じくマンションリノベーションの事例です。この住宅は玄関がモルタルの土間になっています。L字に配された土間が奥にあるリビングまで繋がっています。これは、来客を直接リビングに招きたいというクライアントの要望を受けて考えました。この住宅の来訪者は玄関扉を開けて一度室内に入ります。そこは外と内の中間のような、外が続いているような土間空間です。土足のまま奥へと進んでいき、突き当りの扉を開けるとリビングが表れるというつくりになっています。土間空間がより外部の延長として感じられるように土間と室の間の壁はあえて合板を桟木で押えただけという質素なつくり方をして、つくり込まれた内部ではなく、より外に近い感覚が得られるように設えました。

このようにマンションリノベーションであっても設え方によって、中間的なあいだの空間をつくることが出来ると思います。

事例:板橋の二世帯住居

2階にテラスを設けた二世帯住宅の事例です。このテラスはくつろぐ場所というよりも洗濯物を干すことが主用途のテラスです。そのため、ランドリースペースと名付けた洗濯室に隣接するように配置することでコンパクトな動線となるように配慮しています。主用途が洗濯物干しなので雨の日でも外に干すことが出来るように屋根で覆い、壁で囲んでいます。屋根と壁で囲むことにより周囲からの視線を遮ることができるので気兼ねがない一方で暗くなりがちです。そこでここでは天窓を設けました。外部なのに天窓を設けるのは不思議な感じがするかもしれませんがとても良い方法だと思います。外だから窓を設けてはいけないということはないのです。折角なので、このテラスに接する寝室にも天窓からの明かりが入るようにプランニングを工夫しました。常に一石二鳥や一石三鳥になるように考えています。

事例:戸塚の住居

上記と同じように内部的な外という事例です。2階建ての2階部分にキッチンとダイニング・リビングを配置した戸建て住宅です。そのリビングに接するように大きなテラスを設けました。このテラスは屋根で覆い、壁で囲んでいます。一部屋根と壁に開口があり、外と繋がっています。この開口からは雨も風も入ってきますので完全に外なのですが、考え方としてはリビングの延長の空間なので内ということになります。そもそもなぜ壁で覆っているのか、これまでと同様に幾つかの理由があります。テラスは建物の北側に配置しています。道路を挟んだ向かい側には3階建てのマンションが建っていて、こちらに対面するようにバルコニーが並んでいます。道路があるので少しは距離があるものの、どうしても視線は気になるので周囲の視線を遮るために壁で囲みました。外部に対して壁の印象が強くなるので外観のデザインを整えることにもつながります。テラスとリビングの間に木製サッシを使っているので雨が掛かりにくい方がよいという機能上の理由もあります。最も大切なことは生活していく上で室内とつながった外の空間があることで得らえる広がり、開放感だと思います。色々なことを同時に考え、合理的で情緒的な空間を生み出そうとした結果としてこのような空間が実現しています。

考えたことを実現するにはクライアントの理解を得ることが大切です。理解を得るためには、様々な側面から検討をして納得してもらえる提案でなければならず、共感を得られることが必要だと思います。その結果として豊かな暮らしにつながる建築空間が生み出されます。

建築は面積や長さ、高さなどの数字で表されることがあります。できるだけ数字に縛られず、数字では表現できない、感覚に訴えかける味わい深い建築空間をつくりたいと考えています。そのためにもあいだの空間(中間領域)が上手く作用するのではないでしょうか。

あいだの空間(中間領域)について考えることは奥が深く興味がつきません。あいだの空間(中間領域)を考えることで暮らしが豊かになり、あいだの空間(中間領域)があることで住まいのつくり方に奥行きが生まれると思います。

今回取り上げた事例はあいだの空間のつくり方のごく一部です。ある方にとっては丁度いい場合でも、別の方にとってはそうではないことはあると思います。「丁度いい」は奥深く、人それぞれです。是非、皆さんにとっての「丁度いい」を想像してみてください。

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